別のデジタルゴールドラッシュ - インターネットビジネス

インターネット会社はまた盛り上がっている。それは買い時なのか、売り時なのか。

38番埠頭は、サンフランシスコの湾岸に位置する巨大なハンガーのような構造物だ。かつてはカリフォルニアのゴールドラッシュ時代に中国系移民がつるはしとショベルを持って鉄道建設のために上陸してきたが、その埠頭は今ではインターネットで金持ちになる競争に加わっているスマートフォンやコンピュータの起業家たちの本拠だ。彼らのオープンプランの事務所から、ノイズトイズやアディリティ、そしてトラズラーといったイキで奇妙な名前で新興企業を経営する若い人たちは、猛烈にプログラムを打ち込んでいないときには、近くに停泊している変わったヨットを見つめることができる。

「革新のスピードは我々が今までに目にしたことがあるようなものではない。」と、38番埠頭で若い会社に場所を貸すヴェンチャーキャピタルの1部門のドッグパッチラブを運営しているライアン・スプーンは語る。多くの他の起業家たちのように、借り手たちは、フェイスブックや、ファームヴィルと言ったとても有名なオンラインゲームを作ったジンガのようにしばらくの間インターネット界で脚光を浴びることに邁進してきた会社の後を追いたがる。

いくつかの目立った新興企業は、上場の準備をしたり資金力のある大企業に買われたりする。5月9日に、専門家のためのソーシャルネットワークで去年2.43億ドルの収入をあげたリンクトインは、今にも起こりそうなニューヨーク証券取引所への上場に向けてその価値が33億ドルにもなる条件をあげた。次の日、マイクロソフトはインターネット電話とヴィデオサーヴィス会社のSkypeを85億ドルで買うことを発表した。購読者にクーポンを発行するグルーポンのような他の会社は、間もなく公開しそうだ。2000年のITバブルの崩壊以降まれだったIT企業の上場の復活とM&Aの盛り返しは、産業内で意見が分かれている。ヴェテランの中には、新興企業の評価形成の新しいバブルと、創業から5年たってもまだ満足できるようなビジネスモデルを模索しているツイッターのような一握りのより成熟した会社があると見ている人もいる。より楽天的な声として、多くの若い会社は興奮させる可能性を持っており、また未上場の古いインター会社を先を争って手に入れようとする資金も自信も持ったマイクロソフトのようなたくさんの法人の買い手もいる、と反論するものもある。
 

技術、金融、そして中国

しかしどちらの側も、インターネットの世界は、特に3つの力が突出しているのだが、たくさんの力によって変化しているということには同意する。一つ目は、技術進歩により、オンラインビジネスのためのたくさんの素晴らしい考えを、より簡単に、そしてよりやすく徹底的に試すことができるようになったことだ。二番目に新種の豊かな投資家はそれらの考えを後押しするのに熱心になっているということ。そして三番目に、この流行は以前のものより世界的であるということだ。中国のインターネット企業はアメリカ企業と同じくらい刺激になっている。

技術から始めたい。一つのコンピューターチップに組み込めるトランジスターの数は18ヶ月で倍になるというムーアの法則は働きつづけ、さらに能力があり、手頃な価格の消費者向け商品の激増につながっている。現在のタブレットコンピューターとスマートフォンの中には、10年前のパソコンよりも強力になっているものもある。調査会社のIDCは、2010年には3.03億台だった世界のスマートフォンの出荷が、今年は4.5億台になると推計している。

ムーアの法則はまた、どの装置からでもどこからでもアクセスできるアップルのiTuneストアのような「クラウド」サーヴィスの成長を裏付けた。そのようなサーヴィスはクラウドの工場であるデータセンターを利用しており、そのデータセンターには多くのサーヴァーが詰め込まれており、その処理能力が上がれば価格は急落する。すべてはかつてないほど早く、そして少ない線でつながった。

これらの技術的流行は、他の会社がサーヴィスを打ち立てるコンピューターの基盤である新しい「プラットフォーム」を引き起こしている。例としては、スマートフォンのOSやフェイスブックやリンクトインといったソーシャクネットワークがあげられる。それらの中には何百万人もの人々に利用されているものもある。そしてそのプラットフォームはスマートフォン、センサー、そして他の装置からの情報の海を生み出している。
それらのプラットフォームはデジタルの機会の巨大な場所だ。おそらく一番輝いている革新の例としては、ほとばしるダウンロード可能なスマートフォンやコンピューターのソフトアプリケーション、もしくは「アプリ」と呼ばれるものだろう。アップルのアップルストアは、たったの三歳だが、30万以上のアプリを提供している。フェイスブックのユーザーは1日2千万件の割合でそれらをインストールしている。Skypeのようなサーヴィスもまたスマートデヴァイスや光のような早さの接続スピードの広がりから利益を得ている。

興奮した人の中には、この技術的激変を5億年前のカンブリア爆発になぞらえる向きもある。それは、細胞が完全になり、標準化されたことにもより、地球上の進化が加速した時代だ。それは誇張されているかもしれない。そうだとしても、ウェブ会社を作ることはより簡単になっている。安いクラウドサーヴィスに加入し、何百万もの潜在的な顧客を獲得するためにプラットフォームを活用することによって、数えきれないものが必要だった1990年代に比べ、簡単に金儲けの仕組みを立ち上げることができるようになった。
 

守護天使たち

二つ目の推進力である金融によって、それらの会社は熱心な支援者に困らない。多くのヴェンチャーキャピタルが興味を持つには小さすぎるけれども、彼らは豊かな個人投資家、もしくはヴェンチャー業界の専門用語で「エンジェル」と呼ばれる人たちの議論の対象になっている。それらの金融家たちの多くは、1990年代のバブルで富をなし、自分たちのノウハウや金を現在の小さな会社に投資するのに熱心だ。

前グーグル社員でフェリシスヴェンチャーを経営するエイディン・センクットや、フラッドゲートと呼ばれる会社を監督するソフトウェア起業家のマイク・メイプルのような「スーパーエンジェル」の中には、時折、広く機関投資家から資金を集めて投資する、伝統的なヴェンチャーファンドと同じような動きをするものもいる。100万ドルにもなる個人投資は珍しいいことではない。時々エンジェルたちは力を合わせて若い会社により大きな額を出している。

彼らの積み重なる衝撃は不安定だ。ニューハンプシャー大学のヴェンチャーリサーチセンターによれば、アメリカのエンジェル投資家たちは去年約200億ドルを若い会社につぎ込んだ。それは2009年には176億ドルだった。その額は、アメリカの国立ヴェンチャーキャピタル協会がそのメンバーたちが2010年に投資したといっているのと大きな差は無い。多くのエンジェルの資金は消費者インターネット会社とアプリメーカーへ行っている。より成熟した技術新興企業の金融もまた変わっている。アンドレセンホロウィッツやクライナーパーキンスカウフィールド&バイヤーズといった精鋭のヴェンチャーキャピタル会社は過去数年の間に何十億ドルもの金を新しいファンドで調達している。これらの資金のいくらかは、(ツイッターやSkypeといった)「末期の」投資につぎ込まれ、それらの会社が従来の基準よりも長く未公開で独立のままでいることができるようにした。

ヴェンチャー投資企業だけが、インターネット会社をみているわけではない。それはブームを引き起こしたロシアの持ち株会社で今ではMail.ruと名前を変えたDSTとその関連投資ファンドのDSTグローバルのことだと論ずる人もいるかもしれない。アメリカの多くの投資家が無為無策のまま過ごしていた2009年に、その両社は多額のドルをフェイスブックやグルーポンといった高成長の見込まれる会社につぎ込んだ。これらの投資は大いに割にあったように見える。

アメリカのヘッジファンドや非公開株式投資グループ、そして投資信託会社さえもそれにしたがい、有名なインターネット会社の株式購入に次々と走った。ゴールドマンサックスやJPモルガン・チェースといった投資銀行も、豊かな顧客が賭けに参加するためのファンドを立ち上げている。

シェアポストやセカンドマーケットといった、職業投資家が未公開企業の株式をより効率的に取引できるようにするアメリカの二次的市場の出現により、彼らの仕事は簡単になった。それらはまた、被雇用者やエンジェル投資家が株式を処分するのも簡単にし、新興市場での評価の急上昇が詳細に観察できるようにした。

アメリカの消費者向けインターネット会社がこの金の洪水の唯一人の受益者だったわけではない。そのブームの三つ目の推進力は、その産業の急速な世界化だ。起業家生態系という名に値するものを長きに渡って発展させてきたヨーロッパは、いくつかの印象的な会社の故郷だ。1千万人以上の登録ユーザーを持つ英スウェーデン系音楽提供サーヴィスのスポッティファイや10億ドル程度の年間売上を持つフランスの安売り衣料会社のヴェンテプリヴェといった会社があげられる。

しかしながら、より一層目立つのは、今回の熱狂は前回は単なる見物人だった新興市場、取り分け中国を巻き込んでいることだ。この国は、世界最大のオンライン人口を持つことだけではなく、高成長であることに誇りを持っている。BCGによればインターネットユーザーの数は去年の4.57億人から2015年には7億人以上に増える。そして中国人はもはやゲームをするだけではなく、買い物といった他のオンラインの活動も始めている。2010年から2015年の間に中国のeコマース市場は710億ドルから3.05兆ドルに4倍以上になり、世界最大になるとBCGは予測する。

そのような予測は、海外・国内を問わず、多くのヴェンチャーキャピタルを刺激した。2009年の急落にもかかわらず、調査会社のZero2IPOによれば、中国のヴェンチャーファンドから上がる額は、2006年のほぼ40億ドルから2010年には110億ドル以上に急速に伸びているという。投資総額は、18億ドルからほぼ54億ドルに増えた。この多くはインターネット新興企業に流れた。

投資家はまた、アメリカの株式市場に上場している中国企業の株式が欲しくてたまらない。今年の初めから、これらの会社のうち大きいものの株価は三倍以上に上がっているとiChinaStockのウェブサイトは言っている。中国最大の検索サイト、百度は過去12ヶ月で株価が60ドルから150ドルにあがり、時価総額はほぼ500億ドルになった。オンラインゲームを収益源にしているテンセントは同じくらいの価値がある。どちらも市場価値では世界の5本の指に入る。中国企業上位10社の合計時価総額はグーグルすらしのぐ。彼らは最初に輝きを放つことが多い。中国のオンラインヴィデオ大手ヨウクが12月8日に上場したとき、その株価は161%上昇し、過去5年間でNYSEの新規上場による最大の上場益を記録した。同じ日に上場したオンライン小売のダンダンはほぼ2倍になった。5月4日にはソーシャルネットワークのレンレンが取引初日に29%の株価上昇を記録した。ただそれはほぼ最初の水準に戻ったが。

アメリカでの中国企業の経験は、他の新興市場のインターネット会社がそこで株式公開する後押しをしている。リンクトインが公開条件を明かにしたその日、ロシアの検索エンジンのヤンデックスは間もなく技術の比重の高いナスダックへ上場することによって110億ドルを調達するつもりだと語った。これが新しいテクバブルではないと考える人たちは、リンクトインやレンレンといった企業はビジネスモデルと健全な収入を証明していると指摘する。1990年代の終わりに公開した多くのインターネット企業には同じようなことは言えなかった。さらに技術部門で取引されている他の公開会社の株価収益率倍数はITバブル前のそれにはまったく程遠い。これは未公開企業の過大評価を制限する。
 

作られているバブル?

これにより、ヴェンチャーキャピタリストの中には、2011年は1999年というよりも1995年に似ているかもしれないと論ずる人もでてきた。もしバブルが膨らむなら、弾けるにはまだ時間がかかる。だから今インターネット企業を避ける投資家は金を稼ぐ絶好の機会を逃しているかもしれない。ヴェンチャー投資企業のフライブリッジキャピタルパートナーズのジェフリー・ブスガングは1995年から1997年に投資をしたヴェンチャーファンドは星のような利益をあげたと記録する。

バブルを示す他の点がある。例えば新興企業の中には、グーグルやマイクロソフトといった大きな会社からスタープログラマーを引き抜くために巨額の契約をちらつかせるものもいるという。広く技術産業が動いているとき、彼らは貴重な技術者だ。ナスダック指数は2000年3月よりもはるかに低いかもしれないが、それは世界的な下降からすぐに回復した。そしてアメリカの技術産業の活力を測るサンフランシスコの連邦準備銀行によるテクパルス指標は11年前のピークに近づいているという。

投資家の中には不合理なほど豊富な資金をつぎ込んでいる兆候もまたある。画像共有ソーシャルネットワーク新興企業のカラーは、実際の市場で試されてもいない製品なのに噂によると1億ドルの価値がつけられているという。エンジェル投資家の間の競争もソーシャルメディアの新興企業の評価を過去12ヶ月で50%もせり上げる原因となっている。金融家は時折、契約を勝ち取るために、注意義務を怠る。中国でも、価値があると噂される若い企業は驚くほど早く値上がりし、シリコンヴァレーの標準でも高い平均1,500万ドルから2,000万ドルの最初の資金調達を行う。

これらすべてに見られる危険は、投資家がインターネット会社の価値のリスクを見失っていることだそれは中国においてもっとも大きい。そこでの競争は激烈で、ユーザーは気まぐれだ。さらに中国企業は厄介な規制や政治問題と格闘しなければならない。中国政府はまだ上場ウェブ会社を閉鎖しておらず、企業は普通自己検閲の名人だ。しかしそれに対するいかなる動きもすべての中国のインターネット関連株に広い余波を与えうる。

ヨーロッパとアメリカのインターネット新興企業は似たような脅威には直面していない。しかし彼らはまだ膨れ上がった期待に対して脆弱だ。「すべてのバブルは椅子とりゲームだ」と続けて企業を立ち上げ、スタンフォードで教えているスティーヴ・ブランクは語る。そのトリックは音楽が止まりバブルがはじける直前に会社を売ってしまうことだ。38号埠頭の有望株の中でそのようにできるものがいたら、彼らはいつか1艘や2艘の自家用ヨットを買うことができるかもしれない。
 

発行日: 
2011-05-14
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