立ち上げさせろ - ハイテク産業

英国は世界的な技術系企業をあまりに少ししか産み出してこなかった。それは変わりそうなのか?

ケンブリッジに拠点を置くソフトウェア会社のオートノミーの社長のマイケル・リンチは、その新しいスマートフォンアプリのオーラズマを見せびらかしている。それは、スマートフォンが見たものの拡大版を作って、物体を認識し、関連するヴィデオ、論評、そしてその周辺で利用者が作った画像を表示する。リンチ氏は、オーラズマが言葉よりもむしろ画像をきっかけにしたウェブブラウジングという、急成長する市場で、大きなシェアを素早く獲得することを望んでいる。彼は、「それはプラットフォームだから、その利用法を予測するのは難しい」という。より多くの人々がオーラズマを採用すれば、より多くの事業や広告主がそのためのコンテンツを作り、それはより多くの利益をオートノミーにもたらす、と彼は説明する。

このような、利用者がひとつの技術「プラットフォーム」に群がるという仮想のサイクルは、世界最高の技術事業を際立たせる。英国には先進的企業はとても少ない。多くはアメリカの会社だ。マイクロソフトの成功は、そのOSの偏在に頼っている。インテルはそのPCチップが産業標準なので巨人である。グーグルは、ひとつにはその検索結果がライヴァルよりも多くの検索からなされているので、ウェブ上での情報検索者にとって一番目の選択肢になっている。フェイスブックはソーシャルネットワーキングの世界的中心になった。

デジタル経済は、他の国よりも人口あたりでのオンラインで過ごしている人が多い英国では繁栄している、とボストン・コンサルティング・グループ(BCG)はいう。だが、英国では、インターネット消費者に商品を提供する世界で知られた企業は殆ど無い。「アメリカには、アマゾン、アップル、ペイパルがあり、今ではツイッター、フェイスブック、そしてリンクトインがある。鎖の全てがアメリカの会社だ。」と、今では、アメリカのライヴァルの所属になった旅行レジャー会社のラストミニット・ドット・コムの共同創業者のブレント・ホーバーマンはいう。

たった二つの英国の会社は、どちらもアメリカのハイテク産業の中心のシリコンヴァレーから尊敬を集めるに値するほど革新的で、FEST指標の100の大企業に名を連ねるのに十分なほど大きい。ひとつはこれもまたケンブリッジに拠点を置くARMで、アップルのアイフォンや他の携帯端末を強化するマイクロチップを設計している。もうひとつがオートノミーだ。そのオーラズマは、ウェブページ、ヴィデオ、ヴォイスメッセージ、電子メールなどの型のない情報から分類を生成する事業によって使われるその会社の型認識ソフト、アイドルの上で動く製品だ。
 

リスクと規模

英国の世界的大企業がほんの僅かしかいないということは、ただの傷ついた国家の誇りという以上のものだ。デジタルマーケットを獲得できたプラットフォーム会社は、広い経済の利益を得ている。初心者から巨人に素早く駆け上がった会社は、もちろん仕事や投資を作り出す。しかし彼らはまた、補助的な取引や地元の供給者の成長に拍車をかける。成功した技術系企業は、手本としても、退職した社員が他の事業を始めるにしても、新興企業を生む。この種の先端的革新は、経済成長と密接に関係する。

英国には多くのデジタル企業があるが、ほとんど世界規模にまではならない。その理由の一つには、地元の市場が限られていることだ。アメリカの新興企業は、その玄関先に3億人の顧客がいる。ヨーロッパの市場は、言語と地域ルールによって分断化されており、小売のような英国が自然の適性を持つヴェンチャーの可能性を制限する。アメリカと言語を共有していることは、実際には制限になりうる。フェンスブックやグーグルといった巨人にも、非英語圏の国々には強い競争相手がいる、とBCGのポール・ツウェレンバーグは語る。意欲的な英国企業は、アメリカの競争相手から守る言語障壁を持っていない。

英国はしばしば偉大な考えを生み出してきたが、それを大きな商業的事業に変えるのに失敗した。それはひとつには、真剣な商業的野望にかけていることにまで突き詰められる。技術系企業の場合、それはまた、ヴェンチャーキャピタルと、それに伴う新興企業への支援ネットワークの不足を映し出している。地元の投資家には、強い成長潜在力を持った企業を支援する欲求も忍耐もかけおり、かわりに証明されたビジネスモデルを持つ会社を好むと、起業家は不平をいう。彼らは、確立された評判や、連続する起業家たち、マーケティングの専門家、そして近くのスタンフォード大学の一流のアイディア工場を補完する専門的なヴェンチャーキャピタリストという、シリコンヴァレーの生態系を羨む。

アメリカの、リスクの高いヴェンチャーへの欲求は、固有の勇気と共に、過去の栄光を映し出している。成功した起業家は、次のグーグルで大当たりを狙う年金基金のように、彼ら自身が資金のもととなる。過去に新興企業を率いて成功した上場企業になった事業は、技術株の次の波のための投資家の基盤を作る。

この複合体はアメリカの利益だが、他の場所での若い産業を枯渇させる元だ。多くは英国のものである、見込みのある事業は、辛抱強い資本、産業ネットワーク、そして大市場へのアクセスを提供できるアメリカ企業に買われる傾向がある。ARMはまれな例外だ。ARMが中立を保つことにより、大きな顧客はARMのチップを組み込むことに安心感を持ったためだ。ARMは売らなかったことにより、もっと価値のあるものになる。しかし他の会社はより多くの現金や連絡先を必要としている。

最近の例は、強いマネジメントの背景と、良い技術、そしてそれを支える2.5億ドルのヴェンチャーキャピタルを持った、ブリストルに拠点をおいたマイクロチップ供給者のアイセラだ。その創業者は、携帯電話の世界最大の供給者であるクアルコムと張り合うだろう10億ドルの会社を作り始めた。しかし、5月にその会社は3.67億ドルでアメリカの競争相手のンヴィディアに売られた。
 

それを黒く塗る

しかし、英国が世界王者を生むことができると望むしかるべく理由がある。アイセラは今、アメリカの所有者のものかもしれないが、それは、ブリストルの成熟したマイクロチップクラスターの一部だ。その技術者の多くはそこにとどまるだろう。その企業は成功しそうな商品や特許を持つ。それは他の新興企業を生むだろう。英国の技術力は、コンピューター科学でのアメリカのライヴァルに匹敵し、しのぎさえするほど堅固だ。その技術者たちは。恐らくアイディアを発展させる資金が貴重だったため、無駄を削ったハードウェアの設計に長けている。このつましい革新のブランドは、英国の医療技術新興企業にも見られると、ヴェンチャーキャピタル会社のアマデウスのアン・グローヴァーは語る。それは、効率性が重んじられる携帯インターネットの需要に好都合だ。

ソフトウェアでの次の大きなものはアメリカの外から来るという大きくなる確信もある。技術の重要人物になることを志望する者にとって、シリコンヴァレーで幸運を求めることはかつては義務だった。「ネットワークを作るため、何が起こっているのか探りだすため、他の起業家やヴェンチャーキャピタルの人たちに出会うため、そこに行かねばならなかった。」と、ロンドンに拠点を置く投資会社のアトミコを率いるニクラス・ゼンストレームは語る。現在の起業家たちは同じブログやつぶやきを読み、彼らがどこにいようとも、仲間たちの仮想共同体にアクセスする。そしてアメリカの市場としての重要性は、だんだん小さくなっている。新しい新興企業は、ブラジル、中国、インドといった新興市場を征服することを期待しなければならない。

これらの流れは、英国に、特にその首都に機会を作る。「ロンドンには利点がある。何故ならば、そこは世界一の人種の坩堝だからだ。」2002年にその町に移った直後にインターネット電話会社のスカイプを共同で設立したゼンストレーム氏は語る。世界的企業を作るのに必要とされる広い展望は、多くのロンドンの起業家にとって自然なことだ。それはヴェンチャーキャピタリストにとっても強みだ。「我々はロンドンに11年間おり、これほど強気だったことはない。」フェイスブックなどを支援する世界的ヴェンチャーキャピタル企業のアクセル・パートナーズのケヴィン・コモリは語る。(イスラエルを含む)ヨーロッパの資本の30%ほどは、短期消費者ローンのオンラインプロヴァイダーであるウォンガのような英国の会社に投資する。

多くの英国の技術系企業は外国からやってくる。ウォンガのボスのエロル・ダメリンは南アフリカ人で、ゼンストレーム氏はスウェーデン人だ。利用者をカジュアルな社会的出会いとして引き合わせるサイトのバドゥーの本社は、たとえそれがロシア人のアンドレイ・アンドレフによって設立され、その会社の最初の成長の多くが南ヨーロッパとラテンアメリカで行われていたとしても、ソーホーにある。ロンドンの魅力は、商業的であると共に社会的であることだ。「起業家たちはざわめきが好きで、そのもっとも激しいところにいる。」バドゥーのマーケティング部長のロイド・プリスは語る。

自家製の企業もたくさんあり、その多くはロンドンの金融街への入り口に当たるオールド・ストリート・ジャンクションのあたりに拠点を置いている。(そう呼ばれている)シリコン・ラウンドアバウトでの事業の混合は、創造的アートの中心として、その地域の状況に合っている。多くは、ウェブの現在のプラットフォームの頂上にある、コンテンツ制作に特化している。彼らは技術系企業と同じくらいの出版装備一式を持っている。そのクラスターはデヴィッド・キャメロンを始めとした大臣たちに保護されてきた。政府はその応援が、オリンピック会場の東に広がる「テク・シティ」建設を助けて、その地域への投資と調査を誘致することを望んでいる。

技術仲間の中には嫌悪感を示すものもいる。バドゥーのような世界的野心を持つメディア新興事業は、ショーディッチではなくソーホーに落ち着いていると彼らはいう。ケンブリッジの周りの古い「シリコン・フェン」とは違って、ロンドンのクラスターはその真ん中に大学がなく、シリコンも多くない。しかし、この新興企業の集団の自発的な発生は、活気に満ちた起業家精神の証拠だ。若いロンドンっ子たちが自分たちの新興企業について自慢する権利をどれほど競っているのかというのは、勇気づけられる、とロンドンビジネススクールのジェフ・スキナーはいう。

新参者を助けるのに、そして彼らを世界的な先駆者に変えるのにより何ができるのだろう?あるところまでは、現金と起業家の流れを刺激することだ。新興企業を助ける基金はあまりに少ない。大学によって運営されているケンブリッジ・エンタープライゼズはまれな例だ。それは、シリコンフェンの大物であるハーマン・ハウザーによって立ち上げられた新しい起業家センターを含む幾つかの事務所を大学の周りに構えている。その3つの基金は、ヴェンチャーキャピタリストの関心をひくにはあまりに初期の事業を助ける。その組織は、費用をまかない、その800万ポンドの資本を維持することを目指している。全ての応募者と顔を合わせた打ち合わせをし、幾らかの最初の案内をすると、その投資マネージャーのひとりである、ブラッドリー・ハーディマンは語る。応募者の10人にひとりが幾らかの資金を得られる。1995年以来、それが助けたヴェンチャーの5社に4社がまだ事業を行っているか、その初期投資を返済した。
 

オールド・ストリートに脱出

政府は、初期段階のヴェンチャーへの一層の投資を奨励することを意図して、税制案を議論している。しかし企業にとって、本気のプレイヤーになるためには、これらの計画が伴う金額よりもはるかに大きなものが必要となる。重要な成長期により多くの資本が利用できるのならば、やや小さい企業が大きくなる前に売り払ってしまうことが少なくなるだろう、とフロッグ・キャピタルのマイク・レイドは語る。成功した起業家たちがその予期せずに手に入れた利益を再投資することを奨励するキャピタルゲイン制度もまた有益だ。

人的資本について言えば、関連した分野の学生にビジネスプランを書くよう要求することもまた、起業家的な考え方を強める助けになるだろう。それは、コンピューター科学コースでは十分ではない。国産起業家と同様に、外国人のそれの供給も改善されうる。現在不足しているデジタル商法の知識といったものを持ったより多くの幹部を認めるのと同様に、より柔軟な移民政策も、より多く彼らを生み出すかもしれない。

しかし政府の政策だけがそれだけのことをできる。もっとも役立つだろうことは、英国の技術産業により多くのヴェンチャーキャピタルを誘惑し、その管理能力を広げる僅かなものすごい成功だ。それは、ひいては、どこか他で発明されたビジネスモデルの地方での変形ではなく、プラットフォーム企業になる野望を要求する。「あなたはそれを世界的企業の第一日目だと考えなければならない。」と、ARMの創業者のひとりで、今ではその社長のチューダー・ブラウンは語る。もし英国が技術分野で世界的な存在感を持つのならば、その起業家たちは地元市場を超えてみないといけない。
 

発行日: 
2011-08-06
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