未来を構想する - 消費税論議から考える(9)

消費税にいかに無理があるか、ということをずっと述べてきた。その中でも何より問題なのは、将来世代に負担を回さない、という言い回しをしながら、 実際には将来の見通しが一切立たないということだ。一番大きなところでは、すでに先週も指摘した通り、デフレ促進型の税制を主とする中で、いかにして持続 可能な経済社会を築くのか、ということについての理論的バックグラウンドが一切見当たらない。そしてもしそれが可能だったとして、いったいそれを持続可能 にするには何%の消費税が必要なのか、という点が明らかではない。しかも、目くらましのように2段階増税とし、その後もどこまで上がるかわからないという どこまでも行き当たりばったりのやり方。要するに、戦略レヴェルで、最終的に勝つ姿が全くイメージできておらず、戦術レヴェルで、まず攻略すべき目標が定 まっておらず、用兵レヴェルでは、いつどんな時代でも下策中の下策とされる兵力の逐次投入をしようとしている。このやり方のどこに勝利のにおいをかぎ取る ことができるというのか。独りよがりの理想に従って暴走することがどのような結果をもたらすか、などということの実例は世界中にごろごろしている。人を巻 き込むのならば、せめてほんのわずかでも勝てるという見通しを示してからにしていただきたい。(まさか勝利の定義を消費税を上げること、それ自体だ、など と本気で思っているというような悪夢は、本当に本当に見たくない現実なのであえて目をつぶることにしたい。)

では、おまえはどのよ うに考えるのか、と当然問われると思うので、自分なりの答えを述べておきたい。別に私は自分が絶対に正しいからこうすべきだ、 などと主張しているのではなく、少なくとも消費税増税よりは、(現実的に適用可能かということは脇に置いて)ロジックとしては多少はましなのでは、と考え て提案しているだけの話で、議論を通じて少しでも何らかの成算のある考えがみんなの中でまとまってくればそれでよいと思っているだけだ。少なくとも、解決 法は消費税を上げるしかないから、賛成か反対か決めろ、などという乱暴な雰囲気は私は好みではない。選択肢が一つしか無いなどということは決してあり得 ず、百歩譲ってもし仮にそうだったとしても、その答えは決して消費税などではない。もう少し冷静に、幅広く物事を見るべきだろう。

さて、私 の案は、一番最初にも書いたように、通貨使用料を徴収して実質的に正の金利をなくすとともに、公的市場で取引されるものについては過去一定期間の平均価格 からの乖離率に応じて累進的にインフレ 税を導入することによってインフレを防ぐ、というものだ。戦略という意味での将来的な見通しとしては、私は貨幣流通速度を上げることが経済発展につながる と信じており、通貨使用料はそれを実現する最善の手段だと考えている。これは当然議論があると思うので、しっかり話し合うべきだと思う。消費税増税と貨幣 使用料が理屈としてどちらが経済成長に資するのか、というのはしっかりと議論したい点である。経済成長をどのように実現するのか、という見通し無くして (経済的)戦略などというものは成り立ち得ないからである。戦術的にいえば、通貨使用料とインフレ税というのは、言うなればマッチポンプなので、財源は際 限なく出すことができる。つまり、戦術的には、この二つを上げ下げするだけで、経済活動のかなりの部分はコントロール可能なのではないかと思うのである。 攻略目標を何にするのか、ということはいろいろ議論を通じて詰めていかないといけないとは思うが、それを実現するツールは、おそらくどんな目標であって も、この二つで十分たりるのでは、と思っている。用兵レヴェルでは、私はこれを導入するのならば他の税はすべて無くしてもいいのではないかと考えているの で、大減税と一体化して強行突破すれば、比較的摩擦も少なくいけるのでは、と考えている。現実がどうなのか、ということはもう少ししっかりと議論しなけれ ばならないといけないとは思うが、変革のさいに、すべての人にあまねく利益のある話を持ってくるのは必要なことだろうと思うので、これは大きな武器になり 得るだろう。

現実的ではない、という議論は甘んじて受けるつもりである。しかし、私は、今この時代は経済の枠組みが短くとも100年スパ ン、おそらくそれよりも もっと長いスパンで変わっている時代だと思っている。そんな時代に、10年持つかどうかもわからない制度を、「不退転の覚悟」で突き通すというのはあまり に愚かしい話ではないのか。どうせ摩擦を生むのならば、もっと長いスパンで、しかも世界中に影響を及ぼす枠組みを提示すべき時ではないのか?今この時代に 作られた制度を主導するものは、今後かなりの長きにわたって国際経済の枠組みの中で主導的な立場を握ることができる。ヴェネツィアが複式簿記や保険など国 際貿易に関わる制度を総合して現在に至るまでの500年にもわたる制度の基礎を敷いたように、そしてもっといえば、ローマがその支配を金貨の流通とともに 広げることによって事実上金本位制を確立させたように、今、ここでの制度設計は、もしかしたら今後500年、1000年、それ以上のスパンで世界史を規定 するかも知れないのだ。そのようなときに、現実的でないという批判にどれほどの意味があるというのだ。

せっかくのこのような機会を、くだらない、将来像無き議論に費やすのではなく、生産的な、明るい未来のための議論のために生かしていただけるよう、心から祈念して筆を置きたい。

主カテゴリー: 
主地域: 
キーワード: 
評価: 
0
まだ投票はありません

コメント

コメントを追加