得られた教訓 - さよなら、ティム・ガイトナー

やめてゆく財務長官が最後に語る

共和党がアメリカの政府債務の天井を上げなければ、市場は「混乱」し、その国は危機へと逆戻りするだろう、と1月14日にバラク・オバマは語った。その財務長官のティム・ガイトナーは同じ日にこれはわずかひと月で起こりうる、と注記した。

しかし、もしすべてが計画通りに行けば、ガイトナー氏はその時にはそこにはいない。彼はその手綱を現在ホワイトハウスの首席補佐官のジャック・ルーに手渡す。それは残念なことかもしれない。何千人もの人々が金融危機について学んでいるが、ガイトナー氏ほど実際に把握している人の名前を上げるのは難しいだろう。1990年代にビル・クリントンの財務大臣ロバート・ルービンとラリー・サマーズの下で働いている間に、新興世界のいたるところで通貨と銀行危機に取り組んだ。2007年に世界金融危機が起こった時、彼はニューヨークの連邦準備銀行の総裁だった。ここで彼は、ベアー・スターンズや保険会社のAIGの救済、そしてリーマン・ブラザーズの破綻の決定を含んだ連銀の反応で鍵となる役割を果たした。オバマ氏の財務長官として、彼は、最終的には担保差押えの雪崩を抑制するのにほとんど役に立たなかった複数の抵当計画と同様に、銀行制度を安定化させるストレステストと資本注入を設計し、実行した。

ガイトナー氏の塹壕の中の生活は、独自の言葉を生み出している。真剣な決定は「重大な」、よい考えは「クール」、より良い考えは「注目せざるを得ない」、そして最高の考えは「最適な境界」にある、といった具合だ。危機の間には、「計画はどの計画も打ち破ることができず」、避けられない災害時の利用できるものは何でも利用する方法は「通り道の上のあぶく」で、悪い結果は「ダーク」だ。大衆の認識を管理することは「劇場」と呼ばれる。「ファック」もまた、ふつう動詞としてではなく形容詞として、「全然考えが浮かばない」という意味でガイトナー語録で目立った場所を占める。

より真剣に、ガイトナー氏は危機への関与のルールも開発した。政策立案者の直面する選択は、ほとんどいつも悪い。干渉しないと崩壊の危機にさらされる。介入すれば悪い行動で報われ、大衆を怒らす。「間違いを犯すことに決まっているのだ。だからどちらの間違いの方が正すのが簡単かを決めるよう強いられるのだ。」最近のインタヴューで彼は語った。「危機においては、それをきれいにする方が簡単なので、やりすぎるリスクを冒していると決めなければならない点に到着する。」成功はまた、ある性格の特徴を必要とする。外部者がいっていることに遅らせられることなく、戦いの霧の中へ素早く決定する能力だ。実に、ガイトナー氏は財務長官になるのに、ひどい「劇場」にいた。彼はひどい演説をし、ロビー活動を憎み、議会に対して異なって行動して困難を抱えた。

それだけでガイトナー氏を両極端の評価の人物にするだろう。しかし、リベラルと保守の両方の批判者が同じように、大衆の犠牲の下の大銀行に彼があまりに寛大だと考えた。議会の危機委員会によって集められた証拠は、ガイトナー氏が責任者だった危機前のニューヨーク連銀が特にシティバンクといった銀行の監視に果たした役割のあからさまな絵を描いた。批判者は彼がAIGの相手方(ほとんどが大銀行)にその保険会社の救済の一部として刈り込みを課さなかったことと、シティのような大銀行を国有化したり分割したりしなかったことを非難する。彼の行動と続く金融改革法は、いくつかの銀行が「大きすぎてつぶせない」という悪い原則を温存した、と彼らは言う。

ガイトナー氏は、連銀に監督された銀行はほとんどの組織よりもよく危機に耐えたと語る。その介入はまた、大衆にとってもかなり良い取引だった。連銀と財務省は大銀行とAIGに関与した資金で利益を出した。実に、AIGの株主の中には連邦政府をその救済の面倒な条件で訴えているものもいるのだ。ストレステストと資本増強のおかげで、ガイトナー氏は2009年にほとんどすべて民間の手にゆだねられていた銀行の資本を健全化し再貸し出しをさせた。その回復は緩やかなままだが、他の経済のそれらとはよく比較できる。

ガイトナー氏は、彼の介入がモラルハザードを生んでいると躊躇なく認めるが、その理由で遅れることは危機を悪化させさらに大きな介入を後から必要にすると語る。「最後にはさらに大きなリスクを社会化し、さらに大きな将来のモラルハザード(を作らないと)いけなくなるだろう。」彼は語る。「できる範囲でモラルハザードを緩和するための危機反応を設計しなければならず、それから引き起こした損害のいくらかをやり直すように前に向かってゲームのルールを変えなければならない。」だから、ドッド=フランク銀行改革なのだ。その法は、議会を通過する際に、ひどく長く複雑になった。しかし、それはガイトナー氏が重要だと考えた特徴を維持した。それは、政府が大きな破綻企業を継続事業体とし続ける政府の裁量を制限する一方で、それらを掴み終らせるメカニズムを作り出した。金融システム全体で資本と流動性の緩衝を補強することによって、その法は政策立案者がほとんど「一つの組織によって引き起こされた悪影響について無関心」であることができるようにした。

ドッド=フランクは、ガイトナー氏がアメリカの金融制度にそのマークを残していることを保証する。アメリカの金融は別の問題だ。彼の任期中に予算赤字は毎年1兆ドルを超えている。その経済に残っているたるみを考えると、一時的な大きな欠損はそれほど問題ではない。ガイトナー氏は、今後10年にわたってGDPに対してその債務を安定させるには、GDPのほんの約0.75%の歳出削減と増税が必要になるだけだろうと語る。

より問題となるのは、安定させるためのその道を作り出す計画の欠如だ。その理由はたくさんある。それはオバマ氏にとっての優先事項ではなく、共和党との交渉は彼らのそれぞれの見方の広がる違いによって失敗している。その結果は土壇場で苦心して考え出された一連の取引であり、債務上限が引き上げられる前に政府が数日以内に現金不足になった時の2011年夏のほとんど危機に近いものだった。

2011年に、ガイトナー氏は「人々に何度も、実存的なヨーロッパの崩壊やデフォルトを強いる完全な議会の行き詰まりの場合、我々はその帰結から経済を守る意義のある能力を何も持っていないことを思い出させた。合衆国の制度が立ち上げられたやり方は、議会がすべての火力を持っており、執行機関はほとんど何の確立された火力も持っていないのだ。」と、彼は思い出す。

これは変わりそうにない。今年は、オバマ氏と議会との打ち続く戦いによって支配されそうだ。その結果は、競合する提案の長所よりも、誰が大衆の意見に利点を持っているかによる。もし間違った方向に行けば、その国は再び危機管理者を必要とするだろう。しかし、幸運なことに、ガイトナー氏の技術は再び必要とされることはないだろう。
 

発行日: 
2013-01-19
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