無からのカネ - ビットコイン

慢性的なデフレがビットコインがその法定のライヴァルたちにとってかわることを妨げるかもしれない

最も熱狂的なファンにとって、ビットコインは薬物の有益な代金支払い法以上のものだ。それはまた、消費者向け金融の多くを崩壊させうる技術的脅威でもある。しかし、それはカネなのだろうか?ハッカーにより大量の通貨が繰り返し消失させられるにもかかわらず、ビットコイン経済は成長し続けている。流通しているビットコインの総価額は、1年前にはたった4.9億ドルだったのが79億ドルに増えており、日々の取引量はほぼ60%増えている。もしビットコインがお金っぽさでドルやユーロと張り合うことを望むのならば、それはマスターカード狂以上のものになる必要があるだろう。

経済学者は、カネとは3つの主要な機能で働くものだと説明する。それは、モノやサーヴィスと信頼して交換できる「交換手段」でなければならない。それは安定して価値を蓄えることができなければならず、それにより利用者は多かれ少なかれ購買力を損なわずそのいくらかをしまいこみあとから使うことができるようになる。そしてそれは計算単位として機能しなければならない。ある経済における価値を測るための統計的な尺度だ。アメリカのドルはその3つにすべてあてはまる。ビットコインはもう少し進まなければならない。

ビットコインは、その賢い技術的設計のおかげで、交換手段としては最高だ。利用者は世界中どこでも素早く財産を動かすことができる。中央の手形交換所に頼るよりもむしろ、取引の確認は新たに創出されたビットコインでその仕事への報酬を得る「採掘者」によってなされる。彼らが作りだした新たなカネはいつの間にかビットコインのインフレを起こし、彼らの仕事の費用をすべての利用者に広げる。

この優美な制度はビットコインの使用を安くしている。銀行は正当な購入かどうか確認する必要がないので、取引費用は低いのだ。ビットコインがほぼ匿名なのもまた、薬物取引業者であれ資金洗浄者であれ、取引を秘密にしておきたい人々の間での受け入れを増やすのを助けている。機能性と利用者の利益の結びつきは、人々がそれをモノやサーヴィスそしてほかの通貨と交換するのが簡単だとわかり始めていることを意味する。この交換手段としての信頼性の向上が、ビットコインの価値を支えている。

しかし、ビットコインは正しくは価値を安定して蓄えない。それは技術的にはその仕事をする機能を備えている。ハードドライヴ上の暗号化された財布に貯められたコインは、購入目的で後から取り戻すことができる。しかし、その通貨の価値は荒く変動する傾向にある。Mt Goxの交換所から現存のビットコインのおよそ6%が最近盗まれたように、大量のビットコイン泥棒が、その通貨への信頼を減じている。幾分かはMt Goxのニュースのために、ビットコイン価格はドルに対して2月に30%下がった。より強気な時には、利益が投機家を惹きつけ、少なくとも一時的には価値を急上昇させた。フェイスブックの初期のほとんど所有者として主にその名を知られる双子のキャメロンとテイラーのウィンクルヴォス兄弟は、素人の投資家がその技術に賭けるのを簡単にするためにビットコインを追う基金を立ち上げる計画を最近発表した。

変動する価値はビットコインが計算手段として打ち立てられるのを妨げるかもしれない。ビットコインを受け入れる数少ない小売業者すらも、ほかの通貨を主要な計算単位として使っている。価格は著名な通貨(例えばUSドル)で与えられ、ビットコインの価格はその暗号通貨の交換率により自動的に変動する。同じように、ほとんどのビットコインの所有者は、伝統的な通貨で支払われる賃金の職で働いている。ビットコインの買い手と売り手がユーロやドルで「考える」限り、それはカネの地位には満たないだろう。そしてビットコインの価値が現在現実経済を支配する通貨と比較してそれほど変動しなくなるまで、利用者はその参照用金融的枠組みをかえそうもない。

別のビットコインの癖を考えると、それは最善かもしれない。その通貨の「貨幣供給量」は、最後には2,100万単位で上限となる。ビットコインのリバタリアン的規律のために、それはほとんどの通貨が陥りがちなインフレ的な中央銀行の介入を排除するきちんとした方法だ。しかし、現代の中央銀行は低いが正のインフレを立派な理由で好む。現実世界では、賃金は「硬直的」だ。企業が従業員の給与を削減するのは難しいのだ。わずかなインフレはインフレに速度を合わせそこなった小切手を受け取る労働者の賃金を事実上削減することによってその仕組みを滑らかにする。もし貨幣供給量があまりにゆっくりとしか伸びないと、価格は下落し硬直的な賃金の労働者はより費用がかさむようになる。結果として失業率は上がる傾向にある。もし従業員がさらなる価格下落を見越して現金を貯めこめば、その下落は勢いを増す。

ビットコインの貨幣供給は依然として伸びている。その採掘者はありうる総量のうち半分を少し超えただけの所にいる。新たなコインはだいたい2030年くらいまで採掘されるだろう。採掘者はそれから重要な確認作業の保証として取引費用を導入するかもしれない。より心配なことに、デフレはすでに現実になっている。その通貨への上昇する需要は、幾分かはその価格上昇(故に他のもののビットコインに対する価格の下落はデフレを引き起こす)のためだ。しかし、その供給が究極的には有限だと言う知識もまた、要因だ。

 

デジタルの足かせ

ほかの通貨が計算手段のままであるということは、今のところビットコイン経済の利点だ。もし、多数の労働者が計算手段としてそれを使い、ビットコインが完全な通貨に成熟すれば、その柔軟性の無さは、経済的な大混乱をもたらしうる。Mt Goxの消失のような貨幣供給「ショック」は、制度的崩壊を引き起こしうる。交換所への信認の喪失を考えると、利用者はパニックに際してそのコインを引き出すかもしれず、取引量の危険な減少につながる。そのような崩壊はビットコインの交換手段としての地位を脅かすかもしれず、通貨として完全に消滅することにつながる。

大きな制度的財産を持った評判の良い交換所は、流動性需要に合わせてそのビットコインを売る意思を広報してそのようなパニックを止める役に立つことができるかもしれない。しかし、ビットコインの準備は有限なので、利用者はその約束を信用しないかもしれない。対照的に、印刷機の尽きることのない資源を持つ中央銀行は、そのような不便な制約には直面しない。
 

Free Exchange欄より

 

感想

全体的にちょっと論点が絞り切れていないような印象を受ける。まず、価値を蓄えることができないのは技術的な理由からではないとあるが、ハッカーが原因ならば、それは技術的な問題であり、それが乗り越えられるものならば過渡的な問題だが、継続的に起こるのならば通貨としては致命的な欠陥であると言えるだろう。もっとも現行の通貨であっても偽造を防ぐことはできないので、そのあたりは程度問題ということになるのだろうが。通貨変動が起きるのも、根本的な原因としてはその技術的問題が過渡的なものか恒久的なものかということを見極める過程で起こっているものであり、技術が成熟すればそのような問題は解決するだろう。よって、技術的な成熟にしたがい、さらに供給上限があることを考えると、取引手数料の導入に伴ってコスト面での使い勝手が落ち、将来的にはそれはむしろ計算単位としてのみ意味を持つようになるかもしれない。

そして最後の崩壊のシナリオは、大きな勘違いをしている。貨幣供給ショックによる信認の消失は、コインの引き出し、すなわち売却につながるのだろう。つまり、それはコインの需要不足ではなく、供給過剰と暴落という形をとるのだろう。いずれにせよ、それは例えばドルのような代替通貨によって代用されることになるので、ドルという単一通貨の崩壊が世界経済全体に影響する現在よりも、かなりましな形での経済崩壊となるのではないだろうか。
 

発行日: 
2014-03-15
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