そんなに賢くない

いかにして役員は彼らの会社の金を使うのか
 
例えば1999年の後半にドットコムの株につぎ込んだり、2006年に半分しか建てられていないマイアミの分譲マンションを買ったりと、小さな投資家が不合理かもしれないということを受け入れるのはたやすい。しかし、会社の重役は「情報を持つもの」と考えられている。それが、結局、なぜ内部取引に対してそれほど厳格な法があるかの理由だ。
 
株式買戻しを例にとってみる。投資家はしばしば会社による自社株買いの決定を積極的な指標とみなす。もし役員が株式が割安だと考えているのならば、ほかの人もそう考えるべきだ。
 
しかし、役員たちは市場のタイミングに長けているのだろうか?ソシエテ・ジェネラルの定量戦略家アンドリュー・ラプソーンによるものではない。2008年の1月、株式市場が史上最悪の年に入り始めたまさにその時、S&P500に名を連ねる会社は、彼らのキャッシュフローのほぼ40%を自社株買いに使っていた。2009年の3月までに、株式は底を打ったように見えたが、自社株買いに使われたキャッシュフローは19.6%に下がった。
 
2010年の初めにはさらに低い比率の5.9%しか株式購入に使われていなかった。その年はS&P500が12.8%の上昇を記録したかなり良い年だったことが分かった。役員たちは去年の初めには気力を回復し、彼らのキャッシュフローの19%を自社株買いに使った。しかし、2011年は株式市場にとっては平凡な年だったと証明された。
 
役員たちは市場に影響を及ぼすのではなく、市場に影響を受けているようだ。株価の上昇は経営者をより楽観的にし、その傾向が続くと考えるようけしかける。自社株買いの傾向は一株利益(EPS)を押し上げるので、悪循環が生み出される。投資家はEPSの増加に気づき、それに従って株を押し上げる。危険なのは、その投資は甘いものを食べすぎているようなもので、EPSの改善は継続し得ないということだ。失望の最初の兆候として、株価は急落するだろう。
 
この行動パターンは古い問題と関わるかも知れない。現金は経営者のポケットの穴で燃えやすいと言うことだ。ロバート・アーノットとクリフォード・アスネスの2003年の論文によると、配当の形で彼らの利益を分配する比率が低い会社はそれが高い会社よりも、それ以降ゆっくりとした利益の成長しか示していないという。経営者には、余った金を自社株買いの馬鹿騒ぎに使おうとする衝動がある。この縄張り作りは普通、株主にとっては悪い考えだが、経営者の高い給与を正当化するために使われる。似たような流行で、現代の経営者は株式オプションにより動機付けされ、自社株買いは株価を上げるために設計された。
 
会社のキャッシュフローの使い方としてより合理的なのは何だろう?一つの可能性は現金を年金基金に注入することだろう。コンサルティング会社のマーサーによると、アメリカの年金基金は去年の終わり時点で、積立率がたったの75%で、(2010年の終わりの3,150億ドルから上がって)4,840億ドルの赤字を抱えていた。
 
しかし、経営者たちは、彼らを穴の外に出すために、株式市場の回復に頼っているようだ。ラプソーン氏は、会社がその年金基金のポートフォリオの株式から費用を引いたあとで10%の収益を期待していることを見つけた。
 
それは、今の市場状況を考えれば、全くの希望的観測である。長期にわたって、株式の収益は現在の配当利回りと配当の成長からなっている。S&P500の配当利回りはたったの2.5%なので、それはどんな経済成長の妥当な予測よりも早い7.5%で配当が成長することを要求する。出発点が十分に低ければ、利益の急増は可能かも知れない。しかし、アメリカの利益率は1960年代中頃からの最高レヴェルにある。
 
会社がそのようなバラ色な予測を本当には信じていないという証拠がある。デューク大学が最高財務責任者に対して行った調査では、彼らの今後10年間の株式収益の平均予測が6.3%であることを示している。どうして彼らの会社が年金基金に対してそのような予測を立てることを認めるのだろうか?その答えは、もし彼らがより現実的な数字を使えば、彼らは不足の穴埋めのためにより多くの金を支払わなければならないだろうからだ。そしてそれは彼らの利益を減らし、それ故に株価を下落させるだろう。だからこの明らかな近視眼のかけらは、結局とても合理的なのかも知れない。
 
年金基金の問題は、克服できないものではない。10年にわたる赤字をなくすには、年間約500億ドルの追加支出が必要になるだろう。会社の利益の合計は年間約1.7兆ドルだ。不幸なことに、経営陣にはこの問題に取り組む動機付けがないように見える。彼らは単にそれがなくなることを期待しているのだ。
 
Buttonwood欄より
 
 
発行日: 
2012-01-21
雑誌名: 
記事区分: 
主カテゴリー: 
キーワード: 
0
まだ投票はありません

コメント

コメントを追加