生ける宝物 - 遺産議論

 

ユネスコは友人を見つけるよりも敵を指名する方が上手だ
 
それは奇妙な推測ゲームの始まりのように聞こえる。今月に時点で、以下の混ざり合いそうもない人々や機関が、同じブラシで汚されたと感じた。リヴァプール市役所、パナマの開発業者と地方自治当局、西アフリカのイスラム反乱軍、そして中東のいくつかの古代キリスト教会の喧嘩っ早い司教たちだ。彼らは皆、ユネスコによって「危機に瀕した世界遺産」であると最近運命づけられた場所についての責任を分け合っている。
 
7月6日に終わったその最近の年次総会の間、ユネスコの世界遺産委員会(21か国の持ち回り)は、人類に「目立った普遍的な価値」を持つ、とそれが考える場所のリストに26の新たな場所も加えた。その総数は今962になる。それはそれから5つの場所を「危機に瀕した世界遺産」に名指しした。それは、ある国の結束を示唆するとも、貧弱な保全への非難ともとれるラベルだ。今年の危機リストへの追加は、巨大な建設計画によって少なくとも美観上危険にさらされていると言われたリヴァプールの古い港地区、似たような難問に直面しているパナマの二つの初期ヨーロッパ人入植地、そしてイスラムの純粋型を宣言する狂信者の軍によって容赦なく目標にされているマリの墓地と神殿だ。
 
普通ではない、一括の手続きで、ベツレヘムの聖誕教会が世界遺産に受け入れられ、去年の11月に議論の中ユネスコの完全な加盟を認められたパレスチナ当局の要請で、危機に瀕していると宣言された。伝統的にイエス・キリストの生誕地だと示している洞窟の上に建てられたその教会にとって、最大の問題は、修理されていない漏れからの水の損害と、ギリシャ正教、アルメニア正教、そしてローマカトリックのヒエラルキーがその建物へのアクセスを分け合うオスマン時代の制度を乱すかもしれないどんな修復計画にも同意することを躊躇していることだ。
 
パリのユネスコ本部の官僚すらも含めて、誰も、このありそうもない悪漢のギャラリーが、世界で最も敏感な場所の未来を脅かす力の代表的なサンプルだとは示唆していない。そして、真の悪漢がだれであっても、彼らはその機関の世界遺産部門で働いている数十人の人々によってくじかれそうもない。その保護努力の成功や失敗は、あらゆる意味で敏感な場所の端により近く住む、地元の官僚から土地に飢えた小作農まで、多数の人々の行動により依存している。そしてもちろん、ユネスコは、たとえ紛争中に文化的財産を尊重することを命ずる会議の守護者であっても、武装集団に道徳的影響力以外の何も持っていない。しかし、依然として、その一覧が世界の多くで大きな名声を集める国連の文化機関が正しい信号を送り正しい相手を見つけているかどうかについて大きな問題がある。
 
ユネスコの世界遺産体制は、40年前、数十か国が、世界の文化的、そして自然の伝承物が「劣化の伝統的原因」からだけではなく、「社会経済的状況の変化」のために脅威にさらされている、という考えに加わった時、その生命を始めた。原則を裏書きした人々の中には、保全と環境に特に高い優先順位を与えたリチャード・ニクソンの共和党政権もいた。(それ以来、アメリカはユネスコと荒れた関係を持っている。それは去年、パレスチナを認めたどんな団体への資金供与も拒否する法の下で、その機関への支払いを絶った。)
 
遺産を持つ多くのより貧しい国々では、1972年以来最大の変化は、爆発する人口と世界的な観光業の巨大な興隆が、そのどちらの現象に対処するにも必要な統治の欠如を結びついたものだった。カンボジアの寺院複合体アンコール・ワットとペルーのインカの要塞であるマチュピチュは、観光客の巨大な流入が深刻な損害の原因となるかもしれない、世界の歴史的重要性を持った場所としてしばしば引用される。個々の遺跡を認識しそしてそれ故に宣伝することによって、ユネスコとほかの文化的監視団は、もしその国への訪問者がより広い場所に広がればよりよく行われただろう保全の原因を傷つける危険を冒している。
 
しかし、比較的貧しい国々で遺跡を維持する簡単な方法はない。その分野で働く組織によると、それは、繊細なやりくり、多くの地元の外交、そして長期的な関与を必要とする。よく機能している国でさえも、それを民主的か権威主義的にすることは、もし地元の人々が彼らの遺産を維持しそれを合理的に使うことに興味を持たなければ、記念碑を保全するのに失敗する、とカリフォルニアに本拠を置く世界的遺産基金(GHF)の新たな議長ヴィンセント・マイケルは言う。もし文化的遺産が金を稼ぐのに厄介な障害であるか、短期的な利益を搾取されるだけの何かのどちらかだとみなされれば、その努力は崩壊するだろう。地元の経済学者も立ち上がるとすぐに落ちていきうる観光業にあまりに頼ってこなかったのも当然だ。
 
GHFが、保全と地元開発という戦略を発展させることによる、これらの考えを適用した場所の中には、今年ユネスコの世界遺産リストに加えられた場所の一つである、トルコのチャタル・ヒュユクの新石器時代の遺跡がある。ユネスコはまた、加盟国にそれぞれの世界遺産について「管理計画」を提供するよう言ったが、これらはしばしば、いかにして脅威を避けられるかということを説明して、消極的な意味で表現された。最近の声明で、ユネスコのブルガリア人事務局長イリナ・ボコヴァは、遺産と経済開発との間のより積極的なつながりを引用している。マイケル氏の見方では、歓迎すべき変化だ。
 
しかしユネスコは、ほとんどのほかの国連機関のように、政府を相手にすることを好み、政府がその市民や遺産について本当に気にしているかということの虚構と幸福にも共に生きるという組織文化に苦しんでいる。もしそれが本当だったら、遺産を守ることの問題は、政府によい法を可決しそれらを施行するよう教えることによって簡単に解決しうる。しかし、遺跡が危機にさらされている多くの場所では、政府は全く運営していないか、略奪的なエリートの利益に沿うときにのみ機能している。そのような場所のいくつかでは、(軍閥や民間企業から宗教的指導者までの)非国家プレイヤーと呼ばれているものが、本当にしっかりと機能しているたった一つのものだ。
 
独立の保全機関は民間企業を相手にするのをそれほど嫌がらない。彼らですらも完全に失敗した国家では多くを成し遂げることができないが、彼らは政府の違った階層と民間の利益との間でいくらかの内部の議論があるところで、活躍する傾向にある。そのような国では、部外者は有益な仲裁者になりうる。一般的なステレオタイプとは対照的に、そのような国の中には、中国すらも含んでいる。そこでは、例えばニューヨークに本拠を置く世界記念碑財団(WMF)が、北京の紫禁城のより多くの部分を観光客に開くのを助けるために働いている。
 
保全への最大の挑戦の一つは、貴重な場所を管理する国家的機関(たとえば文化省)が、周辺地域で(開発、交通、衛生の点で)しばしば何が起こっているかについて発言権がないということだ、とWMFの理事長ボニー・バーンハムは語る。それが、ペルーでインカの遺跡を保全する障害の一つだ。しかし、過去を保全することに関心を持つ部外者はその問題を克服する役に立ちうる。
 
ある場合では、ユネスコは、単に非難をすることによって、保全の原因を優先して内部議論のバランスの傾きを助けている。それはおそらく、たとえ議論を呼ぶ開発が(労働党に支配された)市役所に守られても、英国政府によって反対されなかったリヴァプールの危機遺産指定の裏にある意図だ。しかし、その仕事を効率的にするために、ユネスコは民間部門に賭けることへのその文化的反感を克服する必要があるかもしれない。
 
ある程度、それはすでに起きているかもしれない。盗まれた芸術の取引をとめるその機関の努力の一部として、ボコヴァ女史は、彼女が建設的なものという、商業オークション会社との対話を始めた。たぶん、彼女はツアー運営者や、保全者の視点からはさらに暗い力である道路建設者や鉱業会社とより多く話し合うべきだろう。
 
 
発行日: 
2012-07-14
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